ドコモビジネス|NTTコム エンジニアリング

田口 智之

未来ワーキング

見果てぬ夢は泥くさい一歩から始まる
「未来ワーキング」を束ねる実践論

田口 智之

15年後の“主役たち”に会社の未来を託す英断

NTTコムエンジニアリング(以下、コムエンジ)は、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)のグループ会社です。現在、プロパー社員とNTT Comからの出向社員の比率は半々くらいですが、このままいけば15年先の2025年にはプロパー社員が8割を占めると予測されます。つまり近い将来、新卒や中途採用の社員が会社について考え、主体的に引っ張っていく必要があります。このような未来を見据えて、2020年6月、「未来ワーキング」が立ち上がりました。

未来ワーキングは、会社の15年後の未来を想定した理念やビジョン、具体的なアクションプランなどを、社員が考え、全社に提言していく取り組みです。立ち上げ時のメンバーは10名で、15年後のコムエンジを牽引する、未来の“主役たち”を想定して選ばれた社員です。メンバーが取り組んだ最初のミッションは、会社の現状分析です。社員目線から、会社の「いいところ」や「変えるべきところ」をブレストし、ディスカッションを重ね、1カ月後には経営層にプレゼンテーションを行いました。

たとえば、いいところは「国内外の大規模な通信インフラを見守る専門的なスキルを持つ真面目な社員が多い」、あるいは「ユニークな経歴を持つ中途採用の社員が多いので多様な個性がある」などです。一方変えるべきところは、「ネームバリューの低さ」「NTT Comのバックボーンを支える仕事が多く知名度がない」「NTT Comとの協業ではなく独立して稼げるビジネスが少ない」といったものでした。

このような状況を踏まえ、「専門性の高いエンジニアリング技術を世の中に広げる」「個性豊かな社員を輝かせて新たなビジネスを模索する」「もっと自由でダイナミックな働き方のスタイルを考えるという」3つの改善の切り口を提案し、経営層の共感も得ています。こういう取り組みが社員起点で始まっているケースは珍しく、まさに経営層の英断だと感じています。

新たなコーポレートスローガンも社員起点で考える

未来ワーキングを立ち上げて良かったことは、メンバーたちの会社に対する理解が深まったことです。それぞれ違う部署から集まっているため、他部署の業務についてはあまり知らないメンバーが多かったのです。技術等を深掘りする業務が多いため、組織横断のつながりが薄いサイロ化が起きていたのです。多様な部署のメンバーと議論する未来ワーキングにより、新たな気づきが生まれ、組織横断の横軸連携によるコラボレーションが生まれやすい環境が整備できたと考えています。

続いて、新社長就任のタイミングで新たな会社の目標設定が必要となったとき、さらに15名のメンバーが未来ワーキングに参加しました。これで総勢25名となり、会社のミッションやビジョン、バリューを社員起点で考える取り組みが始まります。それを人事担当の私が取りまとめているのですが、コロナ禍では週1回のミーティングもリモート会議になります。最初は皆さん緊張しているので、話を引き出すのが大変でしたね。

今年1月、メンバーが議論して考えた会社のミッションやビジョン、バリューを経営層にプレゼンテーションし、承認されました。現在はデジタルブックやロゴマークなどの作成を進めており、コムエンジ約2,000名の全社員に浸透させていく取り組みを進めています。それとは別に、未来ワーキングには「働き方を考える」「コムエンジらしく稼ぐ」「DXを創出する」という3つのサブワーキングが動いています。各サブワーキングの取り組みが、いずれ未来ワーキング全体の目標設定や会社のコーポレートスローガンに転換していく流れになっています。

すでに何度か幹部層への提案を重ねてきましたが、いまのところ否定的な意見は出ていません。社員起点の取り組みをしっかりと見守ってくれているようです。とはいえ、まだまだ“夢の風呂敷”を広げただけで、具体的な深掘りのフェーズには至っていない段階ですが(笑)。

新たなコーポレートスローガンも社員起点で考える

すべての社員一丸で未来を拓く意義

当面の目標は、各サブワーキングの取り組みを2021年度上半期までにかたちにすることです。どんな小さなことでもいいので、掲げた具体的な目標を達成できるアクションプランの検討を重ねています。多様な部署のメンバーの知恵を結集して、新たな働き方や稼ぎ方、DX実現の道筋を定めて、きちんと地に足がついた取り組みをかたちにしたい。まずは夢を具現化する第一歩を踏み出したいです。

実は、サブワーキングの取り組みで面白いと感じたものが1つあります。現在、NTTグループは通信に続く新たなビジネスの核として電力事業への取り組みを進めています。それにはサービスを提供するオペレーションが必要になりますが、これはまだ世の中に存在しない仕組みです。そこに向けてコムエンジ内の業務を自動化、効率化してリソースを確保できれば電力事業のオペレーションを一手に引き受けられるかもしれません。従来の通信インフラで培ってきた、オーダーからデリバリまでを一元的に提供ノウハウを生かせれば、新事業で稼ぐことができるのではという話が非常に印象的でした。

2035年までの15年、まず未来ワーキングでは5年後を1つのマイルストーンに区切り、明確な数値目標を掲げて稼ぐところに注力していきたいと考えています。NTTグループの再編が進む中、2021年上期の目標と合わせて、あらためて5年後の姿をはっきりとらえて突き進んでいく必要があります。それがコムエンジの知名度を高めていくことにつながるでしょう。一方、これまで私たちはNTT Comの看板で稼いできた実績がありますので、これを謙虚に受け止めつつ、培ってきたノウハウや技術を生かして社員全員でコムエンジらしく、コムエンジにしかできないことを突き詰めていく必要があります。

なお、未来ワーキングのメンバーは固定されてはいません。初期メンバーの10名は、1年を経過したらで卒業です。とはいえ、卒業後もオブザーバーの役割でつながりは残していきます。その後は二期に加わった15名が主軸となり、新たに加わる三期メンバーと取り組みを進めていくことになります。他ならぬ自分たちの会社の未来ですから、活発にメンバーの新陳代謝を行い、より多くの社員に対して門を開いておきたいのです。全社員一丸、少し泥くさくてもいいので、リアルな一歩を踏み出す覚悟で挑んでいきます。とはいえ、私はまとめ役として、もう少し腰を据えて楽しく見守っていきたいと思います。

OFF TIME
リモートワークが中心になった現在は、3歳の息子中心の生活です。平日の日中は仕事の傍ら、息子が保育園から帰ってきたら相手をして、息子が寝たらまた仕事をするという感じです。寝かしつけるうちに、釣られて寝てしまうこともあります(笑)。

田口 智之

PROFILE

田口 智之

2005年にNTTコムエンジニアリングに入社。法人営業で鍛え上げた広く人とつながるコミュニケーション力を生かし、一人ひとりの社員と深く向き合う人事業務に携わっている。座右の銘は「一期一会」。持ち前の人心掌握術を生かし、未来ワーキングを取りまとめる役割も担っている。

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