ドコモビジネス|NTTコム エンジニアリング

佐々木 俊介

ENGINEER

DXの“エバンジェリスト”が実現する
誰1人取り残さない業務改善の世界

佐々木 俊介

  • ホーム
  • arrow
  • ENGINEER
  • arrow
  • 佐々木 俊介
  • 古代ローマ人の叡智に導かれ社会インフラの世界へ

    古代ローマ人の叡智に導かれ社会インフラの世界へ

    物心がつく前から好奇心が旺盛で、タイタニック号の絵本を暗唱したり、自分からピアノ教室に通い始めたりしたそうです。子どものころから、テレビの『NHKスペシャル』を見ていて、特に科学系のテーマが好きでした。勉強も理系に興味があって、高専に進みました。進学後は高専ロボコンに熱中し、リーダーを務めた年には全国大会へ出場しました。

    高専ロボコンで学んだことは、装置を細かく作り込み過ぎないことです。ロボットが壊れたり、ちょっとした段差で動かなくなったりすることを前提に“遊び”を設けるフェールセーフの設計手法が重要だと痛感しました。現在の仕事の現場でも、精緻に突き詰めたい思いに駆られますが、最初からあまり作り過ぎないように心掛けています。

    高専卒業後は大学の工学部に進み、あえていちばん厳しいという研究室に入りました。それは、世界的にも著名な半導体の先生に師事したかったからです。卒論のテーマは、半導体の基礎研究だったのですが、やはり厳しかったです。先生の目の前で論文を説明するのですが、少しでも論理矛盾があると、「わからない。もう1回説明して」と言われ、黒板に公式を書き出してとことんやり込められるのです。とにかく自分の領域ではベストを尽くし、誰にも負けないよう徹底的に勉強する姿勢を叩き込まれました。当時は嫌で仕方がなかったのですが、いまの自分の仕事に対する姿勢につながっています。

    もともと読書が好きで、いろいろなジャンルを乱読していましたが、10代後半に塩野七生の『ローマ人の物語』を読んで感銘を受けました。なぜローマは普遍帝国を実現できたのかという視点で書かれた歴史小説ですが、ローマが繁栄した要因は古代から街道や水道橋などのインフラ整備に心を砕いた為政者によるという史実を知りました。インフラが社会発展の礎になることに感動し、電力、通信といった社会インフラに関わる仕事がしたいと考え、NTT東日本に就職します。

    さまざまな現場を渡り歩いた経験値が財産に

    最初の配属は、街中のケーブルやマンホールの修理部隊です。社会インフラに関わるには、まずは現場を知る必要があると思い、自ら志願しました。マンホールの蓋のひびを目視で確認するような泥臭い世界でしたが、そこで学んだことは、いまでも財産になっています。いずれグローバルな舞台で働きたいという思いもあり、本格的に英語の勉強も始めました。

    次に配属されたのは、サービス展開の部署です。光回線サービスの提供エリアが急拡大していた時期だったので、通信ビル内にある設備設計や、市中の光ケーブル網敷設設計に携わったり、自作のチラシを各家庭にポスティングしたり、いろいろな経験をしました。その後研究開発センターに異動となり、光回線サービスのラストワンマイルを担う伝送装置の開発・検証に従事します。実験室にこもり、ひたすらNTT研究所と共同開発中の伝送装置のテストを繰り返す日々でした。

    不具合の怖さを熟知している上司の下で、あらゆるケースを想定したテストをしました。たとえば伝送装置とPCをつなぐLANケーブルの長さを10m単位で用意し、1つずつ接続するテストがありました。正直、そこまでやる必要があるのかと思っていたのですが、何百回に1回といった確率で不具合が見つかるのです。こういう地道な取り組みがあってこそ、社会インフラである通信サービスの品質が担保されていることを学びました。

    設備系の仕事には6年間ほど携わりましたが、その間も英語の勉強は続けていました。グローバルな仕事への思いが強くなり、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)のグローバル回線サービスのオペレーション部門に異動します。海外で事業展開する日本企業向けに、回線サービスに関する問い合わせを24時間体制で受け付ける部署です。

    海外の回線では、現地キャリアとの連携が欠かせません。日本と海外ではサービスのグレートに乖離がありますので、お客さまの求める“NTT品質”に近づけるために、ギャップを埋めるやりくりや工夫を身に付けました。私のスペシャリティは、マンホールの目視に始まり、開発・構築・運用の現場を渡り歩いて築いた人脈や、獲得した経験値だと思います。

    現場主導のDXを推進する“社内業務改善のスペシャリスト”

    現場主導のDXを推進する“社内業務改善のスペシャリスト”

    現在はNTT Comの主要サービスを守り続ける東京オペレーションセンター(以下、TOC)で組織全体のDX化や改善活動に取り組んでいます。DXのツールとして考えがちなのはAIですが、すべてにAIが適しているわけではありません。もっと広い視野で、DXに最適な技術を選定すべきではという意識を持っていました。TOCに適しているのは、「Splunk」のようなログを中心とするマシンデータから必要な情報を見つけ出すBIツールではないかと考えていたのです。BIツールを利用することで、刻々と変化するオペレーション現場の状況がリアルタイムに数値データへ変換されて、誰もが簡単に分析やデータを利用したプログラム開発を行えるようになると考えました。その発端は、上司の勧めで訪れたアメリカのBIツールイベントでした。

    現地で目にしたのは、アメリカの企業の先進性でした。IT企業のみならず、病院などの公共施設や中古車販売業まで、広くBIツールが浸透しているのです。キャリア・ベンダー任せではなく、それぞれの企業、組織内の従業員が自発的に業務改善に取り組んでいる姿を見て、「これだ!」とひらめきました。それから2年、現在に至るまでBIツールを使ったTOCに横串を通すITプラットフォームの内製に取り組んでいます。

    一例としては、豪雨などの自然災害で電話・ネットワーク回線が切断された際の復旧に関する業務改善です。たとえば県間を結ぶ中継ネットワークには、個人・法人の一般回線に加え、救急・消防、警察など重要度の高い回線も含まれます。ここが切れた場合、災害時に優先して復旧すべきは後者です。とはいえ、従来はエクセルベースで回線が管理されていて、技術担当にしかわからず復旧対応に時間を要していましたが、業務改善は未完でした。

    ネットワーク設備やお客さまご契約状況の変化に追従し回線管理プログラムにも常に変更が必要なのですが、専属プログラマーの人手や費用面から維持するのは難しいという課題が、そこにはありました。BIツールの導入により、オペレーション担当者が変更可能な管理プログラムが完成。長年の目標とされた自働化が実現し、現在はコンピュータの助けで現場の担当者が必要なデータを瞬時に引き出し、スピーディに復旧業務が回るようになりました。

    DX化を「現場の誰もがプラットフォームを自在に使いこなすこと」ととらえ、さまざまな業務改善を実現してきたことで、私たちの部門はこれまでに多くの社内表彰をいただきました。私はDXに関してはスペシャリスト(専門家)ではなく、むしろエバンジェリスト(伝道者)だと考えています。特定の技術者だけではなく、業務に携わるすべての人が扱えるDXを広く浸透させていくことが最も重要な使命だと感じているからです。今後もエバンジェリストとして、現場の業務課題を改善するDXに携わり続けていきたいと考えています。

    私の座右の銘は、史記列伝から「桃李不言下自成蹊」。いい人物、いいモノの下には自然と人が集まってくるという意味です。これは自身の振る舞いはもちろん、DXを広く普及させるための指針でもあります。今後も自然と現場に浸透するような、DXを根付かせていきたいですね。

    OFF TIME

    趣味はスキューバダイビングです。妻が上級者なので、潜るときはいつも先導してくれます。色とりどりの魚に囲まれた海中にいると、非日常的な休日感が得られるところが最高です。コロナが収束したら、沖縄の海に行きたいですね。ヨーロッパを訪ねて、コンサートホールで大好きなクラシックも聴きたいです。

    佐々木 俊介

    PROFILE

    佐々木 俊介

    佐々木 俊介(ささき しゅんすけ)/社内業務改善のスペシャリスト
    2005年、社会インフラに関わる仕事を志し、NTT東日本に入社。開発・構築・運用の現場を経験した幅広い知見を生かし、DXを広く現場に浸透させるエバンジェリストを標榜する。TOCで組織全体のDX化、改善活動に取り組むスペシャリストでもある。

    一覧へ戻る