ドコモビジネス|NTTコム エンジニアリング

近藤 和弘

ENGINEER

警察のサイバー捜査を支える人材が想定する
迷惑行為ゼロのネット社会を構築する青写真

近藤 和弘

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  • 社会課題を解決する仕事を目指して通信業界へ

    社会課題を解決する仕事を目指して通信業界へ

    周りにPCの利用者が少なかった子どものころから、MSXの初期モデルをいじっていました。当時は、PC雑誌に掲載されたプログラムを打ち込むのが楽しみでした。根っからの機械好きで、高校に入るとカメラを購入し、写真に没頭します。その流れで、画像技術や光学を学べる大学に進学。空気中の成分検出を行うセンサーを光ファイバーで構成されたレーザーを使って実現するという、なかなかマニアックな研究をしていました。ここから、環境問題に対して関心を持つようになります。

    卒業後は、環境問題のような社会課題を解決する仕事に就きたいと考えていました。そんな矢先、当時、大学で一緒に研究に携わっていた社会人学生の方から、「通信の世界では、基礎から応用までさまざまな技術の研究をしている」と通信業界を薦められたのです。それまで意識したことはなかったのですが、研究で光ファイバーに触れていたこともあり、通信業界への興味が膨らみます。そこで、通信業界で真っ先に思い浮かんだ当時のNTTに入社しました。

    大学時代に、研究室のネットワーク管理者を担当していた経験を評価されたのか、入社後はOCNのサーバーやネットワークの運用部署に配属されます。そこで、サーバーを24時間365日監視する総括チームでサーバーの運用保守を担当し、現場スタッフを技術的にサポートしていました。トラブル発生時には、現場と連携し速やかな復旧を行う仕事です。余談ですが、当時後発だったOCNはユーザー数が数十万程度、国内ISPでも3番手くらいのポジションでした。そこから国内トップになっていく経緯を見守ってきた世代でもあります。

    その後、OCNのサービス企画に異動となり、主に社外との折衝を担当します。ピアリングと呼ばれる他社ISPとの相互接続の調整や、JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)とのIPアドレス入手の手配など、さまざまな関係各所との折衝に奔走する日々でした。インターネットは新しい技術だったこともあり、そのような折衝の教科書的なものは存在しません。あれこれ手探りで、独自のフォーマットをつくっていきましたね。

    官民連携の安全な通信基盤づくりを先導

    2014年にNTTコムエンジニアリング(以下、コムエンジ)に異動し、現在までOCNの契約者によるabuse行為の対応を担当しています。「abuse」は乱用・虐待という意味で、インターネットの世界では、不正利用や迷惑行為を意味します。具体的にはマルウェア(コンピューターウィルス)の拡散や無差別かつ大量のスパムメール送信、あるいはSNSや掲示板などでの公序良俗に反した誹謗中傷などの書き込みといったものです。OCNに寄せられたabuse行為に関する苦情や相談を受けて、問題のある契約者に注意し、改善を促すカスタマーサポートのような業務を担当しています。

    この業務に付随するかたちで、警察から「このIPアドレスから不正アクセスが検出されたので契約者情報を教えてほしい」などという依頼を受け、法的な手続きにもとづいて開示するということも行っています。不正アクセスやマルウェアは、常に新たな手口が出てきますので、対応は容易ではありません。さらに最近では、弁護士から誹謗中傷の損害賠償に向けての情報開示要請も増えてきました。人間の闇深さ、ネガティブな感情に触れることが多いため、メンタル的なタフさが求められます。いずれにせよabuse行為は、社会のトレンドやニュースにと密接に連携している実感があります。

    日ごろから警察の捜査に協力しているご縁で、5年ほど前からNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の情報セキュリティ部では、都道府県警からのOJTを受け入れ、警察官の技量向上の支援を行っています。それに伴って、コムエンジでも全国20数件の都道府県警に対し、数日から2週間の研修を実施。これをきっかけに、いくつかの都道府県の警察学校に出向き講演を行い、個別の事件に対して技術的な観点からのアドバイスを求められることが増えてきました。昨今、サイバー犯罪は多様化、高度化してきており、官民連携で対応に当たることが重要になっています。

    私はabuse行為を極限まで排して、誰もが安全・安心して利用できるネットワーク環境をつくり上げる夢を描いています。そのために警察との協力はもちろん、会社の枠を越えてISP同士が連携し、業界を横断する仕組みづくりを進めていくつもりです。さらに新たなabuse行為の手口や対応方法、関連する法律の勉強も続けています。国内最大のISPであるOCNに関わっているからこそ可能なことも多く、常々恵まれた環境にいると感じています。

    平和なネット社会を目指す<br>“abuse行為撲滅のスペシャリスト”

    平和なネット社会を目指す
    “abuse行為撲滅のスペシャリスト”

    今年7月、サイバー犯罪対策に向けて積極的に官民連携を推進してきた功績により、埼玉県警サイバー犯罪対策課から個人名宛ての表彰状をいただきました。警察学校での講義に加え、個別のサイバー犯罪に対する技術面のアドバイスが犯人検挙につながったことなどが評価されたようです。一般的に警察からの感謝状は会社宛てや部署宛てなどで授与されることが多く、自分でいうのも面はゆいのですが、個人名宛てで贈られるのはまれだそうです。もちろん、NTT Comやコムエンジが官民連携で継続的に取り組んだ成果が背景にあるのは、間違いありません。

    今後はabuse行為の対策に加えて、利用者のリテラシーを底上げすることも重要になります。中には悪意がなくても、abuse行為に加担してしまうケースもあります。たとえば普段利用しているパソコンがマルウェアに感染し、踏み台にされてしまうといったケースです。対策を知らないことで、犯罪に巻き込まれるリスクを減らしたいですね。

    官民連携の次は、「学民連携」で、小中学校などの教育現場に対してのITリテラシー教育といった働きかけが重要になると考えています。実はいま中学校のPTA会長を務めています。先生たちと接する中で、社会環境の変化によって、子どもたちに関わってくる問題や教育現場での苦労を目の当たりにしました。今後、ITリテラシー教育は安全・安心なネット社会の実現には不可欠ですし、ビジネスチャンスもあるのではないでしょうか。これまで培ってきた経験や知識を生かして、対策を講じ、教育を介して、ネット社会に潜む社会的課題を解決していくことが私の使命の1つだと考えています。将来的には、サイバーセキュリティやabuse対策の分野に貢献し、第一人者といわれるような存在になりたいです。

    座右の銘は「好きこそものの上手なりけり」。どんなに大変な業務であっても好きであり続け、熱意を持って楽しむことが成長につながると考えています。abuse行為が好きというと語弊がありますが(笑)、正しい対策のための知識を吸収して、会社の枠を越えていろいろなプレイヤーを巻き込んでいく取り組みは楽しくもあり、性に合っていると思います。まだまだやるべきことは山積みですが、好きであるという情熱は持ち続けていきたいですね。

    OFF TIME

    趣味の写真撮影も兼ねて、毎月平均で500~600kmくらいロードバイクで走っています。最近、新しいロードバイクを購入したのですが、妻にはけげんな顔をされました。ゆくゆくは家族で自転車旅行に出かけたいという野望がありますが、家族の共感を得るのは難しく、道のりは険しいですね(笑)。

    近藤 和弘

    PROFILE

    近藤 和弘

    近藤 和弘(こんどう かずひろ)/abuse行為撲滅のスペシャリスト
    1999年、NTTに入社。OCNのサーバー運用、サービス企画の勤務を経て、2019年よりNTTコムエンジニアリングでabuse行為対応、警察・弁護士対応などの業務に携わっている。安全・安心なネット社会の実現に欠かせない、社会課題の解決に挑み続けるキーマンである。

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