新たなコミュニケーションの機会を求めて日本へ
ブラジルで生まれ、6歳のときにオーストラリアに移住しました。もともと日本の文化に興味があったため、高校では日本語を学びました。英語、ポルトガル語、スペイン語が話せましたが、アジアの新しい言語を覚えることは期待と興味に満ち溢れていました。大学でも日本語と言語学を専攻し、教育や心理学、通訳関連の科目も学びました。さらに、大学で大正琴をはじめとするさまざまな日本文化に触れたこともあり、次第に日本で働きたいと思うようになりました。
日本に移り住んでからは、小学校や中学校で英語の教師をしていました。教壇に立って子どもたちに授業をするのは楽しかったのですが、一方で難しさもありました。どう話せばきちんと伝わるか、どう説明すれば分かってもらえるかを工夫しました。そのようにして、日本語でのコミュニケーションスキルが磨かれていったと思います。数年ほど英語教師をしていたところで、次のチャレンジがしたくなり、成長著しいIT業界で働きたいという気持ちが募りました。そこからCCNA(シスコシステムズ社が実施するネットワークの基礎知識を証明する資格試験)などを取得し、転職活動を行い、ご縁があってNTTコム エンジニアリング(以下、コムエンジ)で働くようになりました。
最初に配属されたのは、国際海底ケーブルの監視・保守を行う施設「NOC(Network Operation Center)」でした。いろいろな国や地域をネットワークでつなぐ国際海底ケーブルは、LANケーブルに例えるならば、いわば“地球規模の配線”です。最初に仕事の説明を受けたときは驚きとともに、「なんて楽しそうな仕事なんだろう」と思いました。そして実際に働き始めてみると、大規模なインフラを見守る仕事の重要性と素晴らしさを実感しました。まさに、自分の“Dream Job(理想の仕事)”が見つかったという感じでした
グローバルインフラの安定運用に向けて
教鞭をとる
働き始めてしばらくしたころ、国際海底ケーブルの故障が発生しました。ケーブル故障の影響範囲の大きさに驚くとともに、NOCが非常に責任の重い役割を担っていることを痛感しました。その際、現場で慌ただしく動き回るメンバーの姿を見て、故障時の対応をより明確にすればもっと冷静に対応できて、復旧も早くなるのではないかと思いました。それがきっかけで、まず故障発生時の明確な業務プロセスをつくり、チームメンバーの役割分担を決めました。次にメンバーの技術レベルを底上げするための資料やマニュアルを制作して共有し、技術研修も定期的に実施しました。その効果が徐々に出始め、いまではどんな大規模故障でも、チーム一丸で復旧に向けて冷静かつ的確な復旧対応ができるようになっています。この業務改善の取り組みは、大きな達成感が得られました。
NOCで働き始めてから、今年で10年目になります。現在は、シニアスーパーバイザーとして多様な国や地域の個性豊かなメンバー26人のチームを統括しています。主な業務は社内向けトレーニングの実施やスケジュール管理、資料作成、理解度テストの作成およびフォローアップなどです。現場で手を動かすというよりは、どちらかというとメンバーを指導する先生のような立ち位置ですので、小学校・中学校での教師経験が活かせているかもしれません。新たにインドにNOCの運用チームを立ち上げるために3カ月ほど出張した際には、まずインドの文化に触れ、現地メンバーと仲良くなることを優先しました。初対面の人でも、すぐに打ち解けられるのが私の強みです。その後、一緒に業務を回したり、トレーニングを実施したりして、無事にチームを立ち上げることができました。
メンバーのトレーニングには、教科書となるマニュアルが欠かせません。私は、これまでの業務で学んできた経験や知識をすべてマニュアル化してチームで共有することを心がけています。さらに、新たな技術資料なども読み込んで共有します。なかでも、いちばん気に入っているのがトラブルシューティング対応のマニュアルです。装置やネットワークの構成図をビジュアライズし、パラメーターなどを調整してマニュアル化することで、指導しやすくて分かりやすい仕上がりになったときは最高の気分です。
自分のチームのためにマニュアルをつくり、知識を展開し、すべてのメンバーが同じレベルの仕事ができるようにすることが私のミッションです。現場に私がいなくても、問題なく業務が回るようになれば、仕事の効率が格段に上がりますし、私自身も休暇中などに呼び出されることがなくなるでしょう(笑)。今後も、現場のナレッジを高いレベルで共有するためのチャレンジは続けていくつもりです。
今後も国際海底ケーブルの仕事を極める決意
基本的にNOCの業務は日本国内でフルリモートで行われていて、出社するのは月に2、3回くらいでしょうか。そのため、自宅の仕事部屋は複数のモニターが並ぶ“小さなNOC”になっています。国内での仕事がメインですが、国際海底ケーブルの監視・保守では、海を隔てたさまざまな国の人々とコミュニケーションする機会があります。ときには、仕事やトレーニングで海外に出向くチャンスもあります。私自身もインドに加えて、米国のカリフォルニアやグアムなどへの出張経験があり、グローバルな舞台で働けることも、国際海底ケーブル業務の醍醐味です。
英語のスキルは必要ですが、あまり英語に自信がなくても、仕事に対するモチベーションがあれば大きな問題はありません。私のような、日本語でも英語でも初歩的な技術から専門的な技術まで上手に教えられる先生がサポートしますので(笑)、仕事をしながら上達できるでしょう。コムエンジには多様なレイヤーや領域のプロフェッショナルがたくさん働いているため、モチベーションさえあれば、学びつつ成長するチャンスは多いと思います。各種研修も充実しており、どんどん新しい知識やスキルも身につくでしょう。多国籍のメンバーがいる職場で働いてみたい、コミュニケーションスキルを磨きたい、デジタル技術を深く学びたい、グローバルを舞台に社会や人々の暮らしを支えるスケールの大きな仕事をしたい、そんな気持ちを持っている人をコムエンジは歓迎します。
NOCの仕事を始めた時点で、私の夢はほぼかなっています。国際海底ケーブルの仕事は非常に面白いので、この仕事を今後も続けていくつもりです。いずれは現場を俯瞰できるマネージャーになりたいという思いもありますが、そのために、もっと現場の作業やトラブルシューティングにも関わり続けたいとも思っています。世界中のNOCチームの立ち上げサポートなど、まだまだ学ぶことや、やりたいことがたくさんあります。さらに、国際海底ケーブルの監視・保守に限らず、視野を拡げて構築や回線開通の業務にもチャレンジしてみたいです。そのようにして、私の人生、そしてDream Jobを楽しみ尽くしたいですね。
PROFILE
Soares Omah(ソアリズ・オマ)
ブラジルで生まれ、オーストラリアに移住して高校・大学で日本語を学ぶ。日本語のスキルを生かして、大学卒業後は日本に移り住み、小学校・中学校の英語教師を経てコムエンジに入社。現在はNOCのシニアスーパーバイザーとして、現場作業や監視・保守業務の傍らチームメンバーの教育・育成に力を入れている。