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IoT玩具への挑戦…
電車のおもちゃをIoT玩具にアップグレードできるか?への道⑤

IoTイベント

2023.07.13

IoT玩具への挑戦…<br>電車のおもちゃをIoT玩具にアップグレードできるか?への道⑤

Writer

クラウド・アプリケーション&ボイス部

出島 淳

イベントでの披露

いろいろな課題はあったものの、なんとかイベントに供される品質のものは作り上げることはできた。あとは量産化とイベントのシナリオを用意すればよい…と思っていたものの、ここで強敵が目の前に立ちはだかった。コロナ(Covid19)の猛威(第7波)である。

イベント自体の開催の有無といったものなら2択だが、リモートワークを得意とするNTTグループとして当然の「リモート開催」の可能性も出てきた。企画段階でリモート開催なのか集合開催なのかがわかればその準備もしやすいが、その判断はイベント決行の2週間前と決まった。つまり、どちらの開催スタイルにも対応しなければいけないということだ。シナリオとしても電車のおもちゃをイベント会場に置き、参加者が遠隔または会場にてそれを操作するというスタイルにした。リモート開催の場合、組み立て体験はできなくなるが致し方ないと割り切った。

Webサーバーの構築

IoTおもちゃを作るということでハードウェアにはこだわってカイゼンを進めていたものの、ソフトウェアについては簡易に考えていたため、LAN上に置いたRaspberry-PIなどを使った簡易なWebサーバーで提供すればよいと高をくくっていた。ただこれではリモート開催のとき、LAN上のサーバーに対して遠隔からアクセスできるようにしなければならず、特にセキュリティ事情でかえって大工事になる。

そこでクラウドサービス上にWebサーバーを構築し、車両や制御用の端末からアクセスするようにした。当然セキュリティ対策も必要十分なレベルで万全に整えなければならない。このへんは我々がこの分野のプロであることを再認識する点でもある。

クラウド上のWebサーバーにすることによってメリットがあった。セキュリティ対策の手間を考えても、その手間を上回るメリットがいくつもあったが、最も大きいものはスマホから簡単にアクセスできるようにできることであった。今ならだれもが手にしているスマホに、サイトのURLをエンコードしたQRコードをかざしてアクセスするだけでスマホがリモコンに変身した。これならば、イベントがリモートか集合開催かに関係なく、同じようにどこからでも操作できるようなる。(だからこそ認証方法の選定を始め、セキュリティには留意しなければならぬのだ)

イベント開催に向けて

開催スタイルは定まらなかったが、集合開催時には参加者分の機体が必要になるので量産化を進めた。量産化といっても2桁に行かない程度。大量生産ではないので手作業での生産。中途半端な量産化は手間だけが先行する。基板の作成、既製品の車体の改造、3Dプリンタ印刷、3Dプリンタ印刷物の塗装…このような作業をするとは夢にも思わなかった非日常が続いた。それでもなんとかイベント前には数量をそろえることができた。

このころにはイベント本番で利用する立派な走行コースも準備万端だった。

イベント開催

最終的にイベントは集合開催となった。3Dプリンタで作成した1両目はイベントの中で走らせるだけでなく、色を塗ってもらったりシールでデコってもらったりして子供たちのお土産になった。

立派な線路は子供たちでなく大人にも魅力的に映ったし、ロボットアームによる電車の空中移動をコースに組み込み、子供も大人も驚かした。コース走行中の車両から撮った車載動画はスピード感満載・迫力満点だった。こどもによる組み立ても、脱落者なく全員が同じ体験をこなした。スマホリモコンでの走行体験だけでなく、ロボットアームの鑑賞、車体の色塗りタイムなど、色々な仕掛けを盛り込んだおかげでイベントは盛況となった。

おわりに

車両の改造~走行までの話を中心に書かせてもらったが、上記ロボットアームや立派な線路の話だけでも短い小説が書けるだけのネタや思い出が詰まっている。

それだけではない、イベントを盛り上げるため着ぐるみの中で汗だくになって子供たちに接してくれたスタッフ、会場の設営や案内、部材の調達に尽力してくださったスタッフや上司、参加してくれた子供やその親御さんにもそれぞれのドラマがあり、おもちゃのIoT化というほんの少しのアイディアから始まり社内・社外、その家族…全員で作り上げたイベントにつながったということは疑いのない事実である。

ここで得た経験やノウハウ、人的交流がもっと大きな実を結べるよう願ってやまない。

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